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福岡リハビリテーション病院 整形外科 山口 史彦先生

【専門】骨折、外傷、関節外科
・日本整形外科学会《 専門医》

生活習慣の見直しで
高齢者の骨折のリスクは大幅に軽減できる

一般的に骨折とは、骨の弾力性を超えた強い衝撃や圧力などにより、骨が壊れてしまう・折れてしまう疾患です。しかし、それが高齢者の骨折となると原因のほぼ100%が骨粗鬆症なのだといいます。「高齢者の方の場合、転んで骨を折られる方が多いのですが、みなさん、一般的な骨折と同様に、衝撃により骨が折れてしまったと思って来院されます。しかし実際に検査してみると、骨粗鬆症が原因だというケースがほとんどです」。

高齢者が骨折しやすい箇所に、脚の付け根(大腿骨近位部)、腕の付け根(上腕骨)、背骨(脊椎椎体)などが挙げられますが、その中でも特に脚の付け根の骨折などは、生活の質を著しく低下させる危険があり、早期の治療、そしてリハビリが必要になります。骨折は当たり前だった日常を、一瞬にしてがらりと変えてしまう危険性を持った疾患なのです。

◎骨粗鬆症とはどういう疾患なのか?

骨粗鬆症とは、簡単にいうと骨の強度が低下して、骨折しやすくなる骨の疾患のことをいいます。骨粗鬆症が病気として報告されたのは、1941年。それまでは、骨軟骨症や繊維性骨炎などと診断されていたのだといいます。この時に、原因は女性ホルモンの低下であるという疾患概念が示されました。1991年には「骨粗鬆症は低骨量と骨組織の微細構造の変化を特徴とし、骨の脆弱性が生じた結果、骨折危険率の増大に結びつく疾患」だと、骨粗鬆症の定義がしっかりと提案されたのです。これだけ見ても、骨粗鬆症の研究は発展途上だということが見てとれますが、それからさらに9年後の2000年に「骨粗鬆症は、骨強度が低下する疾患であり、骨強度は骨密度と骨質により規定される」ことが報告されました。ここで初めて出てきたのが「骨質」というキーワード。骨の成分は主に「骨密度」に関連するカルシウムやリンなどのミネラル、「骨質」に関係するコラーゲンなどのタンパク質といわれており、それらが不足してしまうことで骨強度はどんどん低下し、骨粗鬆症予備軍になっていくのです。

◎正常な骨密度・骨質を維持するには?

「特に骨質に関しては今研究がどんどん進んでいる段階ですが、生活習慣を正すことが、骨粗鬆症の予防につながります」。現在日本では、男女ともに平均寿命は右肩上がりに延びています。その半面、健康寿命(健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間)はどんどん短くなって
いるという現実と直面しています。
「世の中が便利になっていく一方で、食の欧米化や近代化により食生活が乱れたり、車やエレベーターの出現により、運動する機会を失ったりしていることで、骨粗鬆症の患者数は年々増加しています」。

骨粗鬆症の患者は、約8割が女性です。やはり、その原因として女性ホルモンの低下が挙げられますが、それ以外の原因のほとんどは「生活習慣」です。骨を健康にする栄養素である、たんぱく質・カルシウム・ビタミンD・ビタミンKをバランスよく摂取することを意識しながら「バランスの
よい食事をする」こと。そして、昼間に1日15分ほど日光浴をしてビタミンDを自分で作り出すことを心がけましょう。また、継続して行える適度な運動も大切です。ウォーキングやジョギング、また、筋トレなどの普段より少し負荷のかかる運動がよいでしょう。
骨は毎日作られ、壊されています。そのため、持続的な予防が必要なのです。

◎骨粗鬆症・骨折に対しての措置

「骨粗鬆症になってしまった場合、主な改善策としてはどうしても薬になってしまいます。すぐに良くなるものではないので、根気よく治療を続けることが大切です。骨が作られることを助ける薬や、骨が壊されるのを抑える薬などを飲みながら、生活習慣の改善も指導します」。生活習慣の改善とは具体的に、食生活の見直しや、運動が挙げられますが、そこには骨粗鬆症ならではの落とし穴が潜んでいるといいます。

「運動で骨や筋肉を鍛えることは骨粗鬆症の予防においてとても大切なのですが、実際になってしまった後は、なかなか思うように運動することができません。万が一、運動をしている時に転んでしまったら元も子もありません。福岡リハビリテーション病院(福リハ)では、院内にトレーニング施設が併設しているので、医師をはじめとした理学療法士、健康運動指導士、トレーナーなど専門のスタッフが万全の体制でサポートすることも可能です」。

また、骨粗鬆症が原因で骨折してしまい、手術が必要な場合も、翌日からリハビリを開始し、筋力が落ちないようなサポート体制が整えられているのだといいます。
 

「福岡リハビリテーション病院では、精度の高い骨密度検査を受けていただくことができます。骨折したことがないから安心…ではなく、骨粗鬆症は誰でもなり得ます。ぜひお気軽にご相談いただきたいです」。

 
◎サルコペニアと骨折の関係

加齢とともに、誰もが経験する、筋力低下による足腰のだるさ。通常以上に筋力が低下してしまう症状のことを「サルコペニア」といい、握力・歩行速度・筋肉量の低下で診断を行います。筋力が低下してしまうと、転倒しやすくなってしまい骨折のリスクが高くなります。

また、近年問題視されるようになったのが、サルコペニアと肥満が重なって起こる「サルコペニア肥満」です。筋肉だった部分が脂肪に置き換わっている人もいるため、外見的にはさほど太って見えないこともあるのが特徴です。通常の肥満とは違い、生活習慣病になる確率は13倍といわれている危険な肥満です。ただでさえ加齢とともに筋肉が減りやすいうえ、肥満により体を動かさない生活が続くと、サルコペニアが進行しやすくなる。そうするとますます動かなくなり、脂肪がたまって「サルコペニア肥満」が進行するという悪循環に陥ってしまいます。

サルコペニアと骨粗鬆症は互いに関連が強く、骨粗鬆症がサルコペニア発生のひとつの因子であり、逆に、サルコペニアと診断された場合には、骨粗鬆症の合併を疑う必要があるといわれています。骨粗鬆症、サルコペニア、いずれも素早く発見し、効果的に対策することは、健康寿命をいかに延ばすか、という視点で見てもとても重要なのです

◎ロコモと骨折の関係

ロコモティブシンドローム(ロコモ)は、加齢に伴う運動機能の低下や運動器疾患により、歩行や階段昇降などの移動機能が低下した状態のことをいいます。サルコペニアと症状が類似した部分もありますが、ロコモの原因が運動器全体であるのに対し、サルコペニアは筋肉に限定された病態です。また、評価基準が異なっており、ロコモはサルコペニアより早い時期に該当します。

ロコモの原因となる主な運動器疾患は「骨粗鬆症」、「変形性膝関節症」、「脊柱管狭窄症」の3つが挙げられます。「こうして見てもわかるように、骨粗鬆症はサルコペニアやロコモとも密接に関係しており、骨粗鬆症を予防することが、骨折の予防、すなわち健康寿命を延ばすことにもつながります」。

さらに「日本は今、どの国も経験したことのない高齢社会をむかえています。《平均寿命-健康寿命=介護が必要となる期間》が各国と比較しても高く、今後、社会保障費や医療・介護業界の労働者不足など大きな問題と直面することは間違いないでしょう。つまり、健康で居続けることが社会貢献にもつながるのです」と続けます。これからさらに加速していく高齢社会。病院の患者増加はもちろんのこと、医療・年金制度は、若い人ほど保険料や税負担が重く、将来の給付水準は高齢者に比べて恵まれていない《世代間格差》など、様々な問題が生まれています。

◎骨折予防につながる生活習慣とは?

すべての基本は《歩くこと》です。運動に慣れてない方は、まず、1日1時間ゆっくり歩くことを目指しましょう。それをまずは1ヶ月続けることからスタートです。前述した通り、骨は定期的に入れ替わるので、持続して運動することがもっとも大切です。そして慣れてきたら、坂道を登ったり階段の昇降などを行い、骨や筋肉に少しでも負荷をかけることがとても重要です。加齢による筋力低下や、運動機能の低下を防ぐには、汗をかくような運動を取り入れることが必要です」。

世界でもトップクラスの長寿国、日本。 骨は、体や日常の活動を支える大切な器官です。生活習慣を見直し、骨粗鬆症・サルコペニア・ロコモを予防することで、生涯現役を目指しましょう。骨を健康に保つことは、健康寿命を延ばすことにもつながるのです。

 

取材協力

福岡リハビリテーション病院

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掲載日:2017年08月

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監修:福岡リハビリテーション病院