- 小
- 中
- 大
なぜ筋肉が大事なのか
普段皆さんが何気なくしている手の動きや足の動きなど人の動きには筋肉が必要です。
筋肉や骨、関節などを「運動器」といいますが、要支援や要介護になる大きな理由は、この運動器が弱くなることです。
また、歩く速さは寿命に関連するとも言われており、つまり、筋肉がしっかりしていると速く歩けて長生きにつながるということです。
それくらい筋肉は大切なものなのです。
筋肉の低下からフレイルに
筋肉は、たえず分解(古いものが壊されること)と合成(新しいものが作られること)を繰り返しています。しかし、加齢により合成力が低下し分解が進むため、筋肉量は落ちていきます。それでも運動や食事に心がければ筋肉を維持したり低下をゆるやかにすることが出来るのですが、運動不足や栄養が偏った生活を続けるとますます筋力は低下し、脂肪がつきやすくなります。肥満は痛みなどさまざまな病気になるリスクを高める可能性があります。
病気や膝の痛みなどがあると多くの人は運動不足になりがちですよね。すると、ますます筋力は落ちてしまうという悪循環に。外出が辛く家にこもりがちになると心身が衰えていきます。加齢により心身が衰えたこの状態をフレイル(虚弱)といいますが、フレイルの段階で何らかの対策を行えば、要介護になるのを防ぐことができます。
リハビリで自立した生活へ
私は理学療法士として多くの65歳以上の方々のリハビリを担当してきました。病気やケガによって体を動かす機能が低下した患者さんはフレイル(虚弱)になりやすいのですが、自立した生活が送れるようにリハビリで支援しています。
具体的にリハビリはどんなことをするのか、膝関節の病気で手術をした患者さんを例にお話しましょう。患者さんは、膝の痛みで動きづらい生活が続いていたため、筋肉が通常より衰えている状態です。手術後はさらに筋肉が弱くなっています。リハビリの目標はできるだけ筋肉を健康な状態に戻し、元気に歩けるようになることです。
手術後のリハビリは筋肉が硬くなったり衰えていくのを防ぐためにも早期に始めることが大切。ギブスや装具を着けて膝関節が動かない状態でもリハビリは行います。その場合は、関節を動かさずに太腿に力を入れて筋肉を動かす。太腿に手に触れると、筋肉が動いているのがよくわかります。また、低周波など電気を使って外部から刺激し、筋肉を動かす治療も行います。
90歳でも筋肉は鍛えられる
理学療法士は筋肉に精通しており、常に患者さん一人ひとりの筋肉や関節の状態を見てその時必要なリハビリを行います。筋肉は簡単に表現するとゴムのようなものです。長く弾力のあるゴムがよく伸びて強いように、筋肉も弾性があるほうがよく伸びて動きやすいのです。理学療法士は患者さんにストレッチ、マッサージをして伸びにくい筋肉の部分を柔らかくし体を動きやすく整えてから安全かつ効果的にトレーニングを行います。
膝の手術後、関節が動くようになったらまず行うのが座位での膝の曲げ伸ばし運動です。これは太腿の前部分『大腿四頭筋』という筋肉を鍛える運動です。大腿四頭筋は歩く時に必要な筋肉で、加齢で衰えやすい筋肉でもあります。
それから、次は立位でスクワットなど、徐々に負荷を重くしてリハビリを続け、元気に歩ける体を目指します。
患者さんは、このリハビリはなぜ必要なのか、どこの筋肉を鍛えているのか、理解して行うとより効果的です。
年齢を重ねれば誰もが病気やケガが原因でフレイルになるわけではありません。病気やケガを防ぐために、無理のない運動で筋肉を鍛えてください。そして、病気やケガをしたら、再発を防ぐためにも病院の指導のもとにリハビリに取り組んでください。
いくつになっても、90歳を超えても、鍛えれば筋肉は向上します。
福岡リハビリテーション病院
理学療法士
平川 善之 先生
取材協力
☎092-812-1880
福岡市西区野方7丁目770
http://frh.or.jp
※掲載の記事は、掲載日時点での情報となります。掲載されている、施設名、お名前、役職等、また、医療情報等は当時の情報となります。
掲載日:2019年11月