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(右)福岡リハ整形外科クリニック リハビリテーション部 運動器リハ
理学療法士 出口 直樹 先生
(財)日本スポーツ協会公認 アスレチックトレーナー
(左)福岡リハ整形外科クリニック
健康運動指導士 稲田 卓也 先生
治療後の先まで見すえた健康講座
「膝元気クラブ」ですこやかな歩みへ
膝の痛みはシルバー世代の悩みであり、通院している人も多い。膝の治療で地域の信頼が厚い福岡リハ整形外科クリニックには、膝痛の患者さんが参加する「膝元気クラブ」があるという。どのような活動をしているのか、クリニックや参加者の皆さんに話をうかがった。
膝元気クラブが知りたい! … その目標とは
知識と運動を身に付けていつまでも自立した生活を
膝の健康には、治療後の生活習慣が大事
「治療を終えた皆さんが、もう二度と膝の痛みで病院に来ることがないようにと願って膝元気クラブの活動をしています」と語るのは福岡リハ整形外科クリニック(以下福岡リハ)の理学療法士 出口 直樹先生。福岡リハには膝の病気でリハビリ(保存療法または手術後のリハビリ)を受ける人が通院しているが、主にその患者さんを対象に膝元気クラブの参加を呼びかけているという。
膝の手術を受けた患者さんが医療保険でリハビリを受けられる期間は150日間と定められている。この期間を患者さんにとってより有意義なものにして欲しい、そして治療が終わっても元気な膝でいられるようにと、このクラブはつくられた。「大切なのは治療後の生活をどう過ごすかです。年齢とともに筋力は低下していきますから、生活習慣でその後の人生が決まるといっても過言ではありません。正しい知識と運動を身に付けて治療後の生活に活かし、健康寿命を伸ばしていつまでも自立した暮らしを送ろうというのが膝元気クラブの目標です」と語るのは、同じく福岡リハの健康運動指導士 稲田 卓也先生。出口先生や稲田先生ら膝のプロフェッショナルが健康講座を開催し、患者さんが参加するのが膝元気クラブの活動である。
講座に参加している患者さんに話をうかがうと「先生がとても一生懸命話してくれるんです。この講座を受けないなんてもったいないですよ」「この病院がこういう先進的なこと(膝元気クラブ)をやってくれるから、なんとかやっていけます」と、皆さん積極的で前向きだ。
膝元気クラブの健康講座は『座学』と『運動』の2種に分かれ、どちらも膝の病気で福岡リハの通院リハビリを受けている患者さんなら無料で受講できる。それはどんな内容なのか、実際に講座を体験し、さらに話をうかがった。
膝元気クラブが知りたい! … 座学編
膝の病気を理解して自分で予防できる知識を身に付けよう
膝元気クラブで正しい健康情報をぜひ知って欲しい
膝元気クラブの座学は、通院治療中に1回60分、全10回を受講することができる。少人数で先生と患者さんの距離が近く、気軽に参加できるのも魅力だ。取材に訪れた日は『減量の真実』というテーマで講座が開かれていた。膝痛の原因のひとつが肥満であり、ダイエットは患者さんに
とって大きな課題。しかし患者さんは「ダイエットの情報が多すぎて何を信じていいのかわからない」と言う。そんな患者さんに出口先生は「そうですよね。テレビや雑誌、インターネットなど、ダイエットの情報は氾濫しています。だからこそこの講座で正しい知識を得て欲しいと思います
」と語りかける。講座の情報は、世界的な科学誌に掲載されている英論文を出口さんが解読するなどして集めている。科学的・医学的な根拠がある確かな情報を、患者さんにわかりやすく伝えているのだ。
この回は『肥満とはどういう状態か』という話から『なぜ肥満で膝が痛くなるのか』『効果的なダイエット法とは』『なぜこのダイエット法が効果的なのか』など、最新論文からの情報だけあって知らないことが多く、取材スタッフも驚きの連続。「この話聞けて良かった!」と思うほど濃い内容だった。
患者さんとそのご家族も健康であるように
そのほかの講座も『膝の痛みの原因と予防』『自分でできる痛みの対処法』『筋肉をつける栄養の摂り方』『社会参加の大切さ』など、どれも興味深く膝の健康に役立つものばかりだ。
最終講座には試験があるが、これは合否をつけるものではなく理解を深めるためのもの。
最後に福岡リハの藤原院長から修了証がおくられる。そして担当のリハビリスタッフが一人ひとりにねぎらいの言葉をかけるのだそうだ。
理学療法士は、常に情報収集を怠らず患者さんにアンケートをとって分析するなどして、よりよい講座になるよう心がけている。アンケートでは「痛みが改善された」「自立した生活が送れるようになった」などの声が集まっている。
「福リハでの治療が終わった後も、この講座で得た知識をぜひ生活に活かしていただきたいですね。そして、できればその情報をご家族にも教えて、皆さんで健康になっていただけたらと思います」と、出口先生は熱意を込めて語った。
先生と参加者の距離が近く、気軽に質問もしやすい雰囲気。
この日は「ダイエットにいい食べる順番は?」という質問に出口先生が「野菜から食べましょう」と答えていた
膝元気クラブが知りたい! … 運動編
運動を習慣にして、いつまでも仕事や趣味を楽しんで欲しい
簡単にできる毎日の運動で膝を元気に
膝元気クラブのもうひとつの講座が『運動』である。通院リハビリ期間中週2回の運動講座を受けることができる。「膝の健康を保つためには日々の運動が欠かせません。この講座に参加して運動の爽快感や達成感を味わって、習慣にしていただきたいですね」と稲田先生。
運動は、膝関節の血行を良くしヒアルロン酸の分泌を促すことにも役立つ。そして年齢とともに衰えていく骨や筋肉を運動習慣でできる限り維持・強化して、膝痛やロコモを予防しようというのがこの講座の目標である。
講座で行う運動はとても簡単だ。先生のカウントに合わせて椅子に座って膝の曲げ伸ばし、つま先の上げ下ろしをする。慣れたら足に1キロの重りをつけて行う。はじめはこの重りが負担でなかなか足が上がらなかった人も、回を重ねるほどにスムーズになっていき、家で重りをつけて運動する人もいるという。「簡単な運動にしたのは誰もが覚えやすく家でも続けていただきたいからです」と稲田先生。椅子に座ってする運動を初級コースとして、立ち上がり自分の体重を負荷にして運動する上級コースもある。保険診療での治療を終えた人は、自費での参加も可能だ。参加している患者さんに話を伺うと「誰の世話にもなりたくありませんから(介護は受けたくないから)これくらいの運動はしないと」と、汗を流しながら答えてくれた。
週に2回、リハビリとこの講座に参加する患者さんが多いが、残りの5日も家でこの運動を続ければよりリハビリの効果も高まる。「福岡リハでの治療が終わっても運動を続けて、日常生活を元気に過ごすことはもちろん、仕事や旅行、スポーツなどやりたいことを楽しんでいただきたいですね」
稲田さんの言葉通り、治療後の先まで見すえた福岡リハの取り組みは、これからも患者さんを勇気づけ前向きにしていくことだろう。
稲田さんのカウントに合わせて参加者が運動をする。
決して無理をしないように一人ひとりの力に応じて行っている
取材協力
☎092-812-1880
福岡市西区野方7丁目770
http://frh.or.jp
※掲載の記事は、掲載日時点での情報となります。掲載されている、施設名、お名前、役職等、また、医療情報等は当時の情報となります。
掲載日:2019年08月